一般社団法人 日本公認不正検査士協会

ACFE JAPAN

CFEコラム

長期にわたる着服事件から学ぶべき教訓──外郭団体における内部統制の盲点とガバナンス強化の必要性

香川県の外郭団体「かがわ県産品振興機構」において、50代の男性職員が10年以上にわたり団体の売上金を着服し、その総額が4,800万円を超えるという重大な不正が明らかとなりました。発覚の契機は、当該職員の入院による業務引継ぎ時に、後任職員が過去の振込先データを確認し、不正な振込先として当該職員名義の口座が記録されていたことに気づいたことでした。

この事件から浮き彫りになったのは、経理業務の属人化と、内部牽制の機能不全です。10年以上もの長期間にわたり不正が看過されてきた背景には、経理業務が特定の個人に過度に依存していたこと、チェック体制が形骸化していたことが挙げられます。仮に定期的な内部監査や業務ローテーション、振込先口座の第三者チェックなどが機能していれば、早期に不正を防ぐことができた可能性は十分にあったでしょう。

また、今回の対応として団体は刑事告訴を見送ったものの、被害額の返済を成年後見人に求めるという異例の事態に至っており、ガバナンスの脆弱性が露呈しています。組織としての説明責任や、県民に対する信頼回復には、透明性のある再発防止策とともに、独立した第三者の調査・監査の導入が不可欠です。

一般社団法人日本公認不正検査士協会(ACFE JAPAN)では、不正の予防・早期発見には、以下のような基本的な内部統制の実施が極めて重要であると考えています:

経理業務の分掌と職務ローテーション

不正リスクに特化した内部監査の実施

不正行為の通報制度(ホットライン)の整備と保護措置

従業員向けの不正・倫理教育の徹底

不正は「人の目が届かない場所」で起き、「発見されない」ことで拡大します。地方自治体やその外郭団体においても、組織の規模に関わらず、不正防止に向けた仕組み作りと風土醸成が求められています。

本事件を「他人事」とせず、あらゆる組織が自らの体制を再点検し、健全な運営体制の確立に努めることが、真の再発防止につながると私たちは信じています。

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