一般社団法人 日本公認不正検査士協会

ACFE JAPAN

CFEコラム

公正な取引慣行の確立に向けて

―価格交渉の透明性と誠実性の確保を

2025年8月5日、中小企業庁は、発注企業が下請け企業との価格交渉に適切に対応しているかどうかを調査した結果を公表しました。その中で、シャトレーゼや三菱鉛筆など15社が、下請法に照らして望ましくない対応をしていたとして、最低評価を受け、社名が公表されました。

調査では、これら企業が現金ではなく手形などによって代金を支払い、しかもその支払いまでの期間が60日を超えていたことが明らかになりました。さらには、手数料に相当する割引料を受注企業に転嫁する事例も見受けられました。これは中小事業者にとって大きな資金負担となり、取引の公正性を損なう重大な問題です。

また、地方自治体も調査対象となり、福島県郡山市と神戸市が、価格の交渉と転嫁の両面で評価が低いとされました。官公需においても、民間同様に公正な契約関係が求められる中で、行政の対応が適切でないことは見過ごせません。

一般社団法人日本公認不正検査士協会(ACFE JAPAN)は、こうした構造的な不透明性や力関係の不均衡に起因する「不正の温床」となり得る状況に強い懸念を抱いています。

不正は、明確な違法行為だけでなく、「ルールの抜け道を利用する」行為や、「慣習」として見過ごされがちな不公正な慣行の中にも潜んでいます。下請法や公正取引委員会のガイドラインは、健全な市場競争を守るための最低限のルールであり、それを逸脱する行為は、企業の信頼やブランド価値を大きく損ねる可能性があります。

私たちは、企業や行政機関が単なる法令順守にとどまらず、透明性・誠実性・説明責任を重視した「倫理的なガバナンス」を実現することこそが、長期的な信頼獲得と持続可能な発展につながると信じています。

本件を契機に、すべての組織が取引先との関係性を見直し、公正な取引慣行の構築に取り組まれることを強く期待します。

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