一般社団法人 日本公認不正検査士協会

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CFEコラム

公益通報者保護制度の理解度と必要性について

消費者庁が実施した全国の就労者を対象としたアンケート調査で、内部通報した人を守る「公益通報者保護制度」の理解度が依然として低いことが判明しました。この制度は、法令違反や不正行為を目撃した従業員が安心して通報できるよう、その身元を保護することを目的としていますが、調査結果によれば、40%未満の従業者がこの制度を理解していると回答しています。

アンケートでは、従業者に対して制度の理解度や通報に関する意識を問う質問が行われました。その結果、「よく知っている」と回答した人はわずか11.9%にとどまり、「知らない」または「名前は聞いたことがあるが内容を知らない」と答えた人が合わせて60%近くにのぼりました。さらに、従業者の勤務する事業所の規模が大きいほど、制度の理解度が高まる傾向にありましたが、従業員数が300人超の事業所でも制度の理解度は50%を下回っています。

内部通報窓口の設置状況についても、半数以上の従業者が「設置されているか分からない」と回答し、その存在を把握していない実態が浮き彫りになりました。このような状況下で、重大な法令違反や不正行為を目撃しても通報しない理由としては、「誰に通報したらいいか分からない」という不明瞭さが最も多かったとの結果もあります。

一方で、実際に通報を行った人の中には、「相談・通報して良かった」とする回答が69.5%に上りました。しかしながら、通報者のうち17.2%が後悔しており、その理由の多くが「調査や是正がなかった」ことや「不利益な扱いを受けた」ことに起因しています。

早稲田大学の水町勇一郎教授は、現行の制度では通報者を守る仕組みが不十分であることを指摘し、「制度の実効性を高めるためには、事業者による通報者の保護体制の届け出や、不利益な扱いをした場合の罰則などの法整備が必要だ」と述べました。公益通報者保護制度の理解度が低い背景には、制度の不備や適切な保護措置の欠如があることが浮き彫りになりました。今後、制度の改善と普及を図ることが重要です。

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