一般社団法人 日本公認不正検査士協会

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コンプライアンス違反倒産、増加の一途 その深層と企業の未来

出典元:株式会社帝国データバンク「コンプライアンス違反企業の倒産動向調査(2024年)」

2024年のコンプライアンス違反による企業倒産は、388件と2年連続で過去最多を更新しました。帝国データバンクの調査結果が示すように、もはやこれは一過性の問題ではなく、日本企業にとって深刻な課題と言えるでしょう。

コロナ禍において、政府は企業の存続を支援するため、ゼロゼロ融資をはじめとする様々な救済策を講じてきました。しかし、その支援策が皮肉にも、新たな問題を生み出す一因となってしまったようです。返済期限の到来と共に、粉飾決算などによって資金繰りの実態を隠蔽していた企業の不正が発覚し、倒産に追い込まれるケースが急増しています。特に、サービス業や建設業など、コロナ禍の影響を大きく受けた業種でその傾向が顕著です。

粉飾決算は、企業の財務状況を偽装し、投資家や取引先を欺く行為です。短期的な利益を追求するために、将来のリスクを軽視する経営姿勢が、このような不正を生み出す温床になっていると言えるでしょう。また、雇用調整助成金などの不正受給も増加しており、モラルハザードが深刻化している現状が浮き彫りになっています。

コンプライアンス違反は、企業の信用を根底から揺るがす行為です。一度失った信用を取り戻すことは容易ではなく、取引先や消費者の信頼を失えば、事業の継続は困難になります。企業は、短期的な利益にとらわれることなく、長期的な視点に立った健全な経営を行う必要があります。

では、企業はどのようにコンプライアンスリスクに対応すればよいのでしょうか。

まず、コンプライアンスに関する社内体制を整備し、従業員一人ひとりの意識を高めることが重要です。定期的な研修やeラーニングなどを活用し、コンプライアンスの重要性を周知徹底する必要があります。また、内部通報制度を整備し、不正の早期発見に努めることも大切です。

さらに、経営者は、コンプライアンスを単なる法令遵守と捉えるのではなく、企業倫理や社会規範を踏まえた行動指針として認識する必要があります。コンプライアンスを重視する企業文化を醸成することで、従業員の意識改革を促進し、不正を未然に防ぐ効果が期待できます。

コンプライアンス違反は、企業の存続を脅かすだけでなく、社会全体に悪影響を及ぼします。企業は、コンプライアンスを経営の根幹に据え、持続可能な社会の実現に貢献していく必要があります。

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