一般社団法人 日本公認不正検査士協会

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会計不正疑惑から学ぶガバナンスの要諦

―ニデックにおける不適切会計処理問題を踏まえて―

2025年9月3日、大手機械メーカーのニデックにおいて、グループ内で不適切な会計処理が行われていた疑いが公表されました。同社は直ちに外部弁護士らによる第三者委員会を設置し、事実解明を進める姿勢を示しています。本件は、グローバルに事業を展開する大企業においても、不正リスクが常に存在しうることを改めて浮き彫りにしました。

1. 不適切会計の端緒

問題の発端は、傘下企業であるニデックテクノモータにおける、中国子会社での取引処理でした。取引先からの値引きに伴う約2億円の戻し入金が、適切に会計処理されていなかった疑いがあると報告されたのです。この「処理の遅れ」や「不透明な会計処理」は、往々にして組織全体に潜む不正リスクの兆候となります。

2. 経営層関与の可能性

社内調査の過程では、ニデック本体を含むグループ各社においても、不適切な会計処理を示唆する資料が複数見つかっています。特に、経営陣の関与あるいは認識の下で、資産評価のタイミングを恣意的に操作していた可能性が指摘されています。これは単なる現場レベルの不備を超え、組織文化やガバナンス体制そのものに課題があることを示唆します。

3. 内部統制・ガバナンスへの示唆

今回のケースから得られる教訓は以下の通りです。

透明性の確保:不適切処理が発生しやすいのは、報告・承認プロセスが不透明な領域です。会計処理の一貫性と説明責任を担保する仕組みが不可欠です。

経営層の倫理観:ガバナンスの中枢である経営層がリスク認識を持ち、短期的な数値目標にとらわれず、中長期的な信頼構築を優先する姿勢が求められます。

内部通報・監査の活用:不正の芽を早期に摘むには、従業員が安心して通報できる制度と、それを真摯に受け止める監査体制が機能していることが重要です。

4. 不正検査士の役割

不正検査士(CFE)は、こうした会計不正の兆候を発見・調査・防止する専門家です。企業におけるガバナンス強化のためには、第三者的立場からの視点を取り入れ、内部統制を不断に見直していく必要があります。

今回のニデックの事案は、単なる会計処理の不備にとどまらず、企業経営全体の健全性に直結する問題です。私たちACFE JAPANは、引き続き会員の皆様と共に、健全な組織文化の醸成と不正防止のための実践的知見を提供してまいります。

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