テレビ業界で相次ぐ不祥事:組織としての課題と向き合う時
華やかなテレビ業界で、最近、コンプライアンスを問われる事件が相次いでいます。ある人気番組のプロデューサーによる巨額のオンラインカジノ賭博、ある著名な番組ディレクターによる経費の不適切使用とパワーハラスメント、そして社会貢献を謳うチャリティ寄付金の着服。これらの問題は、個人の行動に留まらない、組織としての課題を浮き彫りにしています。
不祥事から見える共通の背景
記事やニュースで取り上げられているのは、以下の3つのケースです。
人気番組プロデューサーのオンラインカジノ賭博:
多くの人を魅了する番組を手がけてきた人物が、億単位の大金をオンラインカジノに投じていたという報道です。さらに、その番組に関わる他の人物にも同様の利用が発覚している点も気になるところです。
著名ディレクターの経費不正使用とパワーハラスメント:
ある企画で人気を集めた人物が、経費の不適切な使用と部下へのハラスメントにより職務を離れることになりました。長年、局の看板となる番組を支えてきた存在による問題は、組織内のチェック体制の甘さを示唆しているのかもしれません。
チャリティ関連団体の元幹部による寄付金着服:
社会貢献を目的とした活動で集められた多額の寄付金が着服されていたという報道です。これは、社会的な信頼を大きく損なう行為と言えるでしょう。
これらの事件に共通して見られるのは、金銭に関する倫理観の欠如と、組織全体のコンプライアンス意識の希薄さです。かつては「経費の清算も不明瞭な部分が多かった」という話もあるように、業界特有の慣習が、現在の厳しくなったコンプライアンス基準との間に大きなギャップを生み出している可能性があります。
組織として取り組むべき不正防止策
今回の件に対し、世間からは「個人だけでなく組織も問われるべきだ」という厳しい声が多く聞かれます。これは、個人の問題として片付けるのではなく、組織全体の風土やガバナンスの問題として捉えるべきだという指摘です。
不正は、個人の倫理観だけで防げるものではありません。一般的に、不正は「動機(金銭的な誘惑など)」、「機会(内部統制の不備など)」、「正当化(「皆やっているから」といった自己合理化)」の3つの要素が揃った時に発生しやすいと言われています。
今回の事例においても、ギャンブル依存のような「動機」に加え、かつての「不明瞭な経費精算」が示すような組織内の「機会」があったのではないでしょうか。そして、「一般の視聴者とは違う」といった意識が「正当化」の心理に繋がった可能性も考えられます。
このような事態を踏まえ、一般社団法人日本公認不正検査士協会としては、テレビ業界に限らず、あらゆる組織に対し、以下の点に注目して取り組むことをお勧めします。
コンプライアンス規定の明確化と浸透:
曖昧な運用を避け、具体的な行動規範を明確にし、従業員全員に徹底することが重要です。特に金銭に関わるルールは厳格に定めるべきです。
実効性のある内部統制の整備:
不正が起こりにくい仕組みを作り、定期的なチェックや監査を行うことで、不正の「機会」を減らします。内部通報制度の適切な運用も欠かせません。
継続的な倫理教育:
不正防止のための研修を定期的に実施し、従業員一人ひとりの倫理観を高める取り組みが必要です。管理職には、より高い倫理意識が求められます。
不正に対する適切な対応:
万が一不正が発覚した際には、個人の責任を追及するだけでなく、原因を徹底的に究明し、再発防止策を組織として講じ、それを透明性をもって公表することが、失われた信頼を回復する上で非常に大切です。
テレビは、社会に大きな影響力を持つメディアです。個人の行動が、組織ひいては社会全体の信頼を損なうことのないよう、組織としてコンプライアンス意識をさらに高める努力が求められています。