今日は何の日(12月2日)― エンロン破綻が私たちに残した教訓
2001年12月2日。
米国エネルギー大手エンロンが破綻した日として、企業不正調査の歴史に深く刻まれています。
倒産前の売上高は1,110億ドル(現在のレートで12兆円超)。
全米7位に位置する巨大企業であり、エネルギー取引やIT関連事業を中心に時代の最先端企業と見られていました。特に自由化された電力・ガス市場を舞台にしたデリバティブ取引は、利益の約8割を生み出すとされ、投資家からの熱い視線を集めていたのです。
しかしその繁栄は、連結対象外の特定目的会社(SPE)を使った損失隠しという不正の上に成り立っていました。事業実体のない子会社へ巨額の損失を付け替えることで、あたかも本体の業績が堅調であるかのように見せかけていたのです。
転機は2001年10月。
米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』が不正会計を疑う記事を掲載すると、株価は急落。資金繰りも一気に悪化し、わずか2か月足らずで破綻に追い込まれました。
この事件が世界に衝撃を与えた理由は、単なる粉飾決算ではありません。
世界的な大手会計事務所が粉飾を黙認し、時に加担していたこと
格付会社がリスクを見抜けなかったこと
アナリストが財務諸表の虚構を読み解けなかったこと
つまり、「企業を監視すべき外部の目」が総崩れとなった点こそ、最も重い教訓でした。
【ACFE JAPANとしての視点】
エンロン事件は、現代の不正リスク管理において今もなお重要な示唆を与えています。
複雑な金融取引やスキームほど透明性が求められること
“成功している企業”ほど、盲目的な信頼が生まれ不正が見逃されやすいこと
第三者チェック機能(監査、アナリスト、格付機関)の独立性と専門性の重要性
内部統制やコンプライアンス文化の欠如が、巨大企業でも崩壊を招くこと
エンロン破綻から20年以上が経った今も、企業を取り巻く環境は複雑化し続けています。
不正は日々進化し、その手口も巧妙化しています。
だからこそ私たちは、改めてその原点に立ち返り、
**「不正を防ぎ、早期発見し、組織を守る」**ための備えを強化し続けなければなりません。