和光市の会計不正問題から学ぶ自治体財政の課題と対策
埼玉県和光市で発覚した介護保険事業における会計不正処理問題は、自治体財政の透明性とガバナンスの重要性を浮き彫りにしました。本件では、2004年度に発生した給付費の不足を次年度予算から流用する形で補填し、その後20年間にわたり決算書の改ざんを続けるという不正が行われていました。このような長期にわたる不正が発生した背景には、予算編成の甘さ、不正の慣例化、そして内部統制の欠如があると考えられます。
不正の経緯と影響
本件の不正処理は、2004年度の介護保険給付費の不足が発端でした。補正予算を組んだものの予測が不十分で、1億2千万円の不足が発生。これを当時の担当職員が次年度の特別会計から流用することで補填し、決算書を改ざんしていました。以後、この手法が慣例化し、給付費の増加に伴い不正の規模も拡大。最終的に2023年度まで続けられました。
昨年6月、市の決算書と国に提出する決算書抄本の突き合わせ作業で不正が発覚しましたが、市は新年度予算の補正による対応を前提に公表を控えていました。しかし、2024年度の給付費不足額が約3億円に達し、一般会計の財政調整基金から2億1千万円、準備基金から9千万円を繰り入れることで補填せざるを得ない状況となりました。
内部統制の課題
本件のように長期間にわたり不正が続いた要因の一つとして、内部統制の機能不全が挙げられます。具体的には、
チェック機能の欠如: 不正が毎年行われていたにもかかわらず、監査や行政内部でのチェックが機能しなかった。
組織風土の問題: 職員間で「慣例」として不正が受け入れられてしまい、不正を是正しようとする意識が希薄だった。
透明性の欠如: 不正が発覚した際、市は即時公表せず、財政補填策が整うまで情報開示を遅らせた。
今後の対応と改善策
このような不正を防ぐためには、以下の対策が求められます。
財政計画の精緻化: 予算編成時の予測精度を高め、給付費の不足が発生しないようにする。
第三者監査の強化: 外部監査を導入し、不正が発生しにくい体制を整える。
職員教育と倫理意識の向上: 公務員倫理の徹底と、不正を見逃さない組織文化の醸成。
市民への透明性向上: 財政の透明性を高め、市民への情報開示を迅速に行うことで信頼回復を図る。
和光市の事例は、自治体財政管理のあり方を見直す契機となるでしょう。全国の自治体においても、同様の問題が発生しないよう、ガバナンス強化に努める必要があります。