一般社団法人 日本公認不正検査士協会

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CFEコラム

損保ジャパン保険料調整問題:再発防止に向けた構造改革の必要性

損害保険ジャパンによる企業向け保険料の事前調整問題が、社外調査委員会の報告書公表によって衝撃的な事実を明らかにしました。報告書では、独禁法違反の疑いがある不適切な調整行為が385社との取引で横行していたこと、営業店の約8割で不正が発覚していたこと、経営陣も関与していたことが明らかになりました。

この問題は、損保ジャパン単独の問題ではなく、損害保険業界全体のガバナンス(企業統治)やコンプライアンス(法令順守)意識の欠如を浮き彫りにしています。不正行為に関与した経営陣が証拠となるメールを削除するなど、倫理観の欠如も深刻です。

金融庁は損保ジャパンを含む大手4社に対し業務改善命令を発出し、再発防止策の策定を求めています。しかし、不正が常態化していた組織文化を変えることは容易ではありません。報告書でも、「踏み込んだ構造改革を行わなければ、不祥事が再発する」と厳しく指摘されています。

損保ジャパンは、社外調査委員会の報告書を踏まえ、再発防止策の策定を急務としています。具体的には、コンプライアンス体制の強化、社内コミュニケーションの活性化、不正行為の早期発見・通報体制の整備などが求められます。

しかし、真の再発防止を実現するためには、形式的な施策にとどまらず、組織文化の抜本的な改革が必要です。経営陣は率先して倫理観を醸成し、コンプライアンス意識を徹底していく必要があります。また、社員一人ひとりが不正行為にNOと言える勇気を持つことが重要です。

損保ジャパンの不正問題は、企業の社会的責任を改めて問うものです。同社は、今回の問題を教訓として、信頼回復に向け真摯に取り組んでいくことが求められます。

この問題は、損害保険業界全体にとっても大きな痛手となりました。業界全体でコンプライアンス意識を高め、再発防止策を策定していくことが重要です。また、監督当局も適切な指導監督を行い、このような不正行為が二度と起こらないようにしていく必要があります。

提言

損害保険業界全体でコンプライアンス研修を徹底する

第三者による定期的な監査を実施する

不正行為の通報窓口を強化し、通報者保護を徹底する

経営陣の報酬とコンプライアンス遵守状況を連動させる

法令遵守状況をディスクロージャーする

損保ジャパンの不正問題は、決して他人事ではありません。企業倫理のあり方を改めて考えさせられる事件です。再発防止に向けて、関係者全員が真剣に向き合っていくことが求められます。

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