粉飾決算倒産、コロナ禍以降最多へ:東京商工リサーチの調査結果から読み解く
株式会社東京商工リサーチの調査によると、2024年1-8月の「粉飾決算」倒産が前年同期比83.3%増の11件と急増していることが明らかになりました。このペースが続けば、コロナ禍以降では年間最多となる可能性があり、企業の財務状況に対する警戒感が高まっています。
粉飾決算倒産が増加する背景
粉飾決算は、企業が赤字や資金の不正流出などを隠蔽するために、意図的に財務諸表を改ざんする不正行為です。従来は、倒産後に発覚することが多く、巧妙な手口によって長期間隠蔽されるケースも少なくありませんでした。
しかし、コロナ禍を機に状況は変化しつつあります。企業が経営危機に陥り、銀行とのミーティングや取引先への支援要請などを通じて、粉飾決算が発覚したり、自ら告白するケースが増加しているのです。
粉飾決算倒産の現状
負債規模: 粉飾決算倒産は、すべて負債1億円以上の企業で発生しています。取引や資金調達の維持を図るため、金融機関や取引先に虚偽の決算書を提出する行為は、ある程度の規模を持つ企業が中心に行われる傾向にあります。
倒産形態: 粉飾決算が発覚した企業の多くは、「破産」という倒産形態をとっています。これは、金融機関が資産の差押えや貸出金の回収に動くことや、取引先が取引を停止することなどにより、企業が経営を継続できなくなるためです。
粉飾決算が企業にもたらす影響
粉飾決算が発覚すると、企業は以下のような深刻な影響を受けます。
信用失墜: 企業の信用は一気に失墜し、取引先や投資家からの信頼を完全に失う可能性があります。
資金調達の困難: 金融機関からの融資が打ち切られるだけでなく、新たな資金調達も困難になります。
法的責任: 経営者や関係者は、刑法上の詐欺罪や商法上の虚偽記載罪などの罪に問われる可能性があります。
粉飾決算を防ぐために
粉飾決算は、企業の存続を危うくするだけでなく、経済全体にも悪影響を及ぼします。粉飾決算を防ぐためには、以下の対策が重要です。
内部統制の強化: 会計処理の透明性を高め、不正行為を早期に発見できるような内部統制システムを構築する。
外部監査の有効活用: 外部監査人による厳格な監査を実施し、財務諸表の信頼性を確保する。
経営者の意識改革: 経営者が不正行為の重さを認識し、コンプライアンスを重視する企業文化を醸成する。
取引先とのコミュニケーション: 取引先との関係を密にし、お互いの状況を把握することで、早期に問題を発見できる可能性を高める。
まとめ
粉飾決算は、企業にとって深刻な問題であり、その発覚は企業の存続を危うくします。今回の調査結果を踏まえ、企業は財務状況に対する監視を強化し、不正行為を防ぐための対策を講じることが求められます。また、金融機関や取引先も、取引先の財務状況を慎重に評価し、粉飾決算のリスクを最小限に抑える必要があります。