一般社団法人 日本公認不正検査士協会

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虚偽の契約書が生んだ歪み:その背景にあったもの

1. 地方の静かな町で起きた衝撃

新潟県阿賀町。雄大な自然に囲まれたこの町で、衝撃的な事件が発覚しました。下水道事業やその他の整備事業で、契約書が偽造されていたことが明らかになったのです。その背後には、ノルマ達成のプレッシャーに苦しむ職員の姿がありました。

2. 虚偽の契約書が生んだ歪み:その背景にあったもの

調査の結果、男性職員は2020年度から昨年度までの間に、少なくとも106件もの不正行為を行っていたことが判明しました。彼は、工期内に工事が終わらないことを知りながら、補助金交付のため虚偽の契約書を作成・提出していました。

彼の行動は、決して許されるものではありません。しかし、私たちは彼を単なる悪者として断罪することはできません。そこには、過酷なノルマ達成のプレッシャーに苦しみ、追い詰められた人間の姿があったのです。

3. 追い詰められた末の虚偽:過度なプレッシャーの恐ろしさ

彼の供述によると、「スケジュールが押し、上司から指摘されるのを恐れた」とのことです。ノルマ達成の重圧に押しつぶされ、絶望的な状況に追い込まれた末の犯行だったと言えるでしょう。

この事件は、過度なプレッシャーが職員の倫理観を低下させ、不正行為を誘発する可能性があることを示しています。ノルマ達成至上主義は、職員の心身を疲弊させ、健全な組織運営を阻害するだけでなく、このような悲劇を生み出す温床にもなり得るのです。

4. 再発防止への提言:多角的な取り組みで倫理観の向上を

このような悲劇を二度と繰り返さないためには、単なる指導や処分だけでは不十分です。組織全体で倫理観を高め、不正行為を未然に防ぐための多角的な取り組みが必要です。

1) 業務量の適正化と目標設定の明確化: 職員に過度な負担を課すことなく、達成可能な目標を設定することが重要です。また、業務量と目標設定のプロセスにおいて、職員の意見を積極的に反映する必要があります。

2) 上司と部下のコミュニケーションの活性化: 上司は、部下の状況を把握し、適切なサポートを行うことが重要です。また、部下は上司に対して、抱えている問題や懸念事項を気軽に相談できる環境が必要です。

3) 内部監査体制の強化: 不正行為の早期発見・防止のために、内部監査体制を強化する必要があります。また、監査結果に基づき、迅速かつ適切な是正措置を講じる体制も必要です。

4) 倫理研修の実施: 職員に対して、倫理に関する研修を実施し、公務員の倫理意識を高めることが重要です。研修では、具体的な事例を用いて、不正行為の違法性やリスクを説明する必要があります。

5) 匿名通報制度の導入: 職員が不正行為を目撃した際、気軽にそれを報告できる仕組みが必要です。匿名通報制度は、職員が報復を恐れることなく不正行為を告発できる環境を整備する上で有効です。

6) 処罰の徹底: 不正行為を行った職員に対しては、厳正な処分を行うことが重要です。処分内容を明確に示し、職員に不正行為の重大性を認識させる必要があります。

5. 職員と組織の健全な発展のために

今回の事件は、地方自治体におけるガバナンスの問題にも警鐘を鳴らしています。職員一人ひとりの倫理観を向上させ、不正行為を許さない組織風土を醸成することが重要です。

そのためには、職員に対するサポート体制の充実、コミュニケーションの活性化、内部統制の強化、倫理研修の実施などが不可欠です。

組織全体で協力し、職員と組織の健全な発展を目指していくことが求められています。

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