一般社団法人 日本公認不正検査士協会

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CFEコラム

金融機関における不祥事:組織倫理の欠如と再発防止への課題

近年、金融機関において、職員による不正行為、および経営陣による隠蔽工作が社会問題化しております。県商工信用組合(郡山市)で発覚いたしました一連の不祥事は、組織としての倫理観の欠如、内部統制の脆弱性、そして経営責任の曖昧さを改めて浮き彫りにした事例と言えます。

事案の概要と問題点

当該信用組合では、2008年から2022年にかけて職員による預金着服等の不正行為が10件発生し、そのうち8件が旧経営陣によって隠蔽されておりました。不正行為の総額は1億円を超え、組織としてのガバナンスが著しく機能不全に陥っていたことが明らかになりました。

本件における主な問題点は以下の通りです。

職員の倫理観欠如: 預金着服という行為は、顧客の信頼を裏切る重大な背信行為であり、職業倫理の欠如を示しております。

経営陣の隠蔽体質: 不祥事を認識しながらも隠蔽を主導した旧経営陣の行動は、組織の信頼を失墜させるだけでなく、監督官庁への報告義務を怠るなど、法令遵守意識の欠如を示しております。

内部統制の不備: 監視カメラ映像の消去や議事録の改ざんなど、内部統制システムの脆弱性が不正行為を助長いたしました。

現経営陣の責任: 現理事長による監視カメラ映像の消去など、不適切な行為も判明しており、組織としてのガバナンス体制が問われております。

再発防止に向けた提言

金融機関は、公共性の高い存在として、顧客からの信頼を基盤とするべきです。今回の事案を踏まえ、金融機関は以下の対策を講じる必要があります。

倫理観の醸成: 職員に対する倫理研修の強化、コンプライアンス意識の向上を図る必要があります。

内部統制の強化: 内部監査部門の独立性確保、内部通報制度の充実など、内部統制システムの強化を図る必要があります。

経営陣の責任明確化: 経営陣に対する研修の強化、責任追及体制の整備など、経営責任を明確化する必要があります。

監督体制の強化: 監督官庁は、金融機関に対する監視体制を強化し、早期に不正を察知する必要があります。

金融機関は、今回の事案を教訓として、組織全体の意識改革とガバナンス体制の強化を図り、顧客からの信頼回復に努めるべきであると考えます。

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