一般社団法人 日本公認不正検査士協会

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フジテックの申告漏れ問題から学ぶ企業の税務コンプライアンス

東証プライム上場のエレベーター大手「フジテック」が、大阪国税局から2023年3月期までの4年間に計約20億円の申告漏れを指摘され、追徴税額約6億円を既に納付したことが明らかになりました。この事例から、企業の税務コンプライアンスについて考察します。

申告漏れの背景と国税局の指摘

フジテックの申告漏れは、海外子会社から徴収しているロイヤルティーの料率が原因でした。国税局は、この料率が低すぎるとして、「移転価格税制」を適用しました。移転価格税制とは、グローバル企業が税負担を軽減するために、親会社と子会社間で取引価格を操作し、所得を低税率国に移すことを防ぐための制度です。

見解の相違とその解決

フジテックは「適正に処理していると考えていたが当局との見解に相違があった」と説明しています。このような見解の相違は、国際税務においてよく見られる問題です。特に、ロイヤルティーやライセンス料のような無形資産の取引は、評価が難しく、税務当局との間で認識のズレが生じやすいです。

税務コンプライアンスの重要性

この事例は、企業が税務コンプライアンスを徹底することの重要性を再認識させます。国際取引における移転価格の設定は慎重に行う必要があります。適正な料率の設定はもちろんのこと、その根拠を明確にし、税務当局とのコミュニケーションを密にすることが求められます。

再発防止に向けた企業の取り組み

企業が申告漏れを防ぐためには、以下の取り組みが有効です。

専門知識の導入: 国際税務に詳しい専門家を採用し、税務コンプライアンス体制を強化する。

内部監査の徹底: 定期的に内部監査を実施し、税務処理の適正性を確認する。

ドキュメンテーションの充実: 取引の根拠や料率の設定理由を詳細に記録し、必要に応じて税務当局に提出できるようにする。

当局との対話: 税務当局と積極的にコミュニケーションを図り、見解の相違を早期に解消する。

まとめ

フジテックの申告漏れ問題は、グローバル企業が直面する税務リスクの一例です。税務コンプライアンスの重要性を認識し、適正な税務処理を行うための体制を整えることが、企業の信頼性向上と持続的成長につながります。特に、国際取引においては、税務当局との見解のズレを最小限に抑えるための慎重な対応が不可欠です。

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