一般社団法人 日本公認不正検査士協会

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守秘義務違反と公益通報の狭間で

はじめに

2024年6月、鹿児島県警の元警視正が、内部情報を漏らしたとして国家公務員法違反(守秘義務違反)容疑で逮捕されました。この事件は、守秘義務と公益通報という相反する二つの倫理の間で揺れる個人の葛藤を浮き彫りにし、組織と個人の情報の取り扱いについて改めて考えさせられるものです。

事件の概要

逮捕された元警視正は、2020年から2022年にかけて、県警の捜査情報や人事情報などを外部に漏らした疑いが持たれています。漏らされた情報の中には、捜査対象者に関する情報や、処分を受けた警察官の氏名などが含まれていたとされています。

守秘義務と公益通報

公務員には、職務上知り得た秘密を守る守秘義務が課せられています。これは、国家機関の公正性と国民の利益を守るために必要なものです。一方、公益通報制度は、公務員が職務上知り得た法令違反や不正行為を内部または外部に通報することを可能にする制度です。これは、組織の腐敗を防ぎ、公正な行政運営を実現するために設けられています。

相反する二つの倫理

今回の事件では、元警視正は守秘義務に違反して情報を漏らした一方、公益通報者として内部の不正を告発しようとした側面もあったとされています。守秘義務と公益通報は、一見相反する二つの倫理のように見えますが、必ずしもそうとは限りません。むしろ、公益通報は、守秘義務の例外として位置づけられることも多いのです。

公益通報制度の重要性

今回の事件は、公益通報制度の重要性を改めて認識させてくれます。公益通報制度は、組織の不正を内部で解決することを目的としていますが、同時に、公務員が守秘義務に違反することなく、不正を告発できる仕組みでもあります。

組織と個人の情報の取り扱い

今回の事件は、組織と個人の情報の取り扱いについても、改めて考えさせられるものです。組織は、情報セキュリティ対策を強化し、情報漏洩を防ぐための体制を整備する必要があります。一方、個人の情報を取り扱う公務員は、守秘義務の重要性を認識し、倫理的な行動を心掛けることが求められます。

おわりに

鹿児島県警元警視正逮捕事件は、守秘義務と公益通報という相反する二つの倫理の間で揺れる個人の葛藤を浮き彫りにしました。この事件を教訓として、組織と個人が協力し、情報セキュリティ対策を強化し、倫理的な行動を心掛けることが重要です。

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